“The Door Into Summer” Robert A. Heinlein

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centerstar “… no matter how many times you get your fingers burned, you have to trust people.”
from “THE DOOR INTO SUMMER” by Robert A. Heinlein (1960)

ご存知,SF の巨匠,Heinlein (ハインライン) の代表作,『夏への扉』からの一節.タイムトラベルが出てくるなど SF 作品ではあるが,小説としての構成,文章の平易さと美しさには図抜けたものがあり,SF ファンでなくても読む価値がある.

物語は,主人公の発明家 Dan が,やっと見つけた大発明を友人と元恋人に横取りされるところから始まる.深く傷つき,人間を信じられなくなった Dan は,いっそ死んでしまおうと,安全性の疑問視されていた “long cold sleep” (長期冷凍睡眠) に入る.数十年後,意外にも無傷で眠りから覚め,そこで予想もしない「未来」の展開を知った彼は,原因を探ろうと再び過去に戻る計画を立てる.そうやって過去と「未来」を行き来しながら,彼はやがて,少しでも明るい未来に向かおうと奮闘していく.上の台詞は,その最後のあたりで登場するもので,Dan が到達した心境をよく示している.

「何度手を噛まれても,それでもなお 誰かに手を差し出さなくちゃいけないんだ」. (拙訳)

この作品は,これ以外にも positive thinking な言葉に溢れている.思えば 1960 年といえば,大戦の興奮が冷め,アメリカも日本も明るい未来に向かおうとしていた頃だった.科学にも幸福な信頼が寄せられていた.単なる懐古趣味としてでなく,その頃の素朴な期待を,我々は思い出す必要があるんじゃないだろうか.他の名台詞も,いつか紹介します.お楽しみに.

注:日本語版は『夏への扉』(福島訳,ハヤカワ文庫,ISBN4150103453, 640円).ただし原文 (英語) は極めて平易なので,可能であれば洋書入門の意味も兼ねて原書にあたることをお薦めします.