確率微分方程式に対するsymplectic数値解法とその安定性

担当:檜垣 元秀

題目:確率微分方程式に対するsymplectic数値解法とその安定性(研究紹介)

概要:
Hamilton系と呼ばれる種類の微分方程式系はsymplectic性という性質を持ち,この性質を保存する数値解法として,symplectic Euler法などさまざまなものが知られている.また,常微分方程式のsymplecticな数値解法においては,元のHamiltonianに摂動を加えたものが保存され(e.g.[1]),元のハミルトニアンも近似的に保存されることが重要な性質の1つである.
確率的に変動する項を含む微分方程式である,確率微分方程式について,類似のスキームを構築する試みは,既に[2]などによって行われている.しかし,その場合は常微分方程式の場合のような議論が成立せず,スキームが長期的に不安定になる場合が考えられる.
本発表では,その程度について議論し,数値計算例を提供するとともに,この問題についての研究の展望を述べる.

参考文献:
[1]E. Hairer, C. Lubich, and G. Wanner(2002), Geometric Numerical Integration, Springer-Verlag, Heidelberg.
[2]G. N. Milstein, Yu. M. Repin, and M. V. Tretyakov(2002), Numerical Methods for Stochastic Systems Preserving Symplectic Structure, SIAM J. Numer. Anal. 40.4, 1583-1604.