力学系理論を用いた差分スキームの安定性解析

松尾 宇泰
2014/4/9 (水), 15:00-17:00
東京大学 工学部6号館 235号室

 降籏・森・松尾らによる「離散変分導関数法」は,ここ20年ほど流行している構造保存型数値解法の一種で,保存・散逸則をもつ偏微分方程式を無限次元勾配系とみなして,その勾配構造をうまく離散化することで,保存・散逸則を引き継ぐ離散スキームを構成する手法である.これは大変うまくいっているが,数学的に筋が良いことの代償として,方程式が非線形な場合に,その非線形性をも(ある意味で自然に)引き継いでしまう難点があった.
 その回避策のひとつとして,勾配構造を多段で定義して,非線形性を「分解」して回避する技法が知られているが[1,2],この妥協により,今度は安定性が著しく損なわれる場合があり,現時点に至るまで,その根本的な解決方法は世界的にもopenである.
 これに対し,方程式が散逸的な場合に限られるが,力学系理論の観点から[1,2]の技法で導出される多段スキームの挙動を理解し,その安定化を図る方法が,本講演者らにより近年提案された[3].本講演ではその概要を説明するとともに,今後を展望する.

参考文献
[1] Matsuo, T. and Furihata, D., Dissipative or conservative finite-difference schemes for complex-valued nonlinear partial differential equations, J. Comput. Phys., 171 (2001), 425–447.
[2] Dahlby, M. and Owren, B.,  A general framework for deriving integral preserving numerical methods for PDEs, SIAM J. Sci. Comput., 33 (2011), 2318–2340.
[3] Matsuo, T. and Furihata, D., A stabilization of multistep linearly implicit schemes for dissipative systems, J. Comput. Appl. Math., 264 (2014), 35–48.