ハミルトン系に対するエネルギー保存解法の高精度・並列化

宮武 勇登
2014/5/7 (水), 15:00-17:00
東京大学 工学部6号館 235号室

 本発表では,ハミルトン系の数値計算法について考える.特に,ハミルトン系のエネルギー保存性に着目し,構造保存数値解法の観点からエネルギー保存解法を考える.離散勾配法[2,4]は,時間2次精度のエネルギー保存解法であり,1ステップあたり,微分方程式の次元(以下Nとする)と同じサイズの非線形方程式を解くコスト(f(N)とする)がかかる.
 ところで近年,エネルギー保存解法の高精度化の研究が行われているが,そこでは計算コストの増大が大きな問題となる.例えば,合成解法に基づく4次精度スキームでは,毎ステップ,3f(N)のコストがかかり,選点法に基づく4次精度スキームでは,f(2N)のコストがかかる.また,これらはどちらも,アルゴリズムの性質上,並列計算による計算効率の向上は困難である.
 これに対し,本発表では,[1,3]の技巧を用いて,容易に並列計算が可能な,1ステップあたりの計算コストがf(N)の新しい(時間4次精度の)エネルギー保存解法を提案する.

参考文献
[1] J. C. Butcher, The effective order of Runge–Kutta methods, Lecture Notes in Math., 109 (1969) 133–139.
[2] O. Gonzalez, Time integration and discrete Hamiltonian systems, J. Nonlinear Sci., 6 (1996) 449–467.
[3] Y. Miyatake, An energy-preserving exponentially-fitted continuous stage Runge—Kutta method for Hamiltonian systems, to appear in BIT Numerical Mathematics.
[4] G. R. W. Quispel and D. I. McLaren, A new class of energy-preserving numerical integration methods, J. Phys. A, 41 (2008) 045206.