数理情報第3研輪講

日時
2009年12月8日(火), 16:30〜18:30.
場所
東京大学 工学部6号館 238号室.
講演者
相島 健助 (D2)
題目
対称三重対角行列に対する QR 法の収束性(文献紹介)
概要

対称行列の固有値計算では,通常与えられた行列をまず直交同値変換により対称三重対角化し,この対称三重対角行列の固有値を計算する.対称三重対角行列の有力な固有値計算法の一つに QR 法がある. 本発表では,この QR 法の理論的収束性に関する論文 [1] を紹介する.古典的な解析により,QR 法において Wilkinson シフトを用いることで大域的収束が保証され,その収束速度が二次以上になることが証明されている[3].しかしながら収束速度に関して,実験的には三次になる場合が多い.これに対し紹介論文 [1] では,まず大域的収束の新たな証明を与え,その証明を応用することで,実験的にほぼ三次収束が実現されることの直感的な説明を与えている.また,理論的にも三次収束が保証されるシフトを提案している.同著者の関連研究として,ユニタリヘッセンベルグ行列に対して QR 法を用いる場合の大域的収束性,収束速度の議論もあり[2],本発表ではこれらの結果についても紹介する予定である.

参考文献

[1] T.-L. Wang, Convergence of the tridiagonal QR algorithm, Linear Algebra Appl. 322 (2001), 1-17.
[2] T.-L.Wang and W. B. Gragg, Convergence of the shifted QR algorithm for unitary Hessenberg matrices, Math. Comp. 72 (2001), 375-385.
[3] J. H. Wilkinson, Global convergence of tridiagonal QR algorithm with origin shifts, Linear Algebra Appl. 1 (1968), 409-420.

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