ハミルトン系に対する Symplectic Model Reduction

担当:柳澤 広大

題目:ハミルトン系に対する Symplectic Model Reduction(文献紹介)

概要:
高次元の力学系モデルに対する数値計算のコスト削減を行う手法に Model Order Reduction と呼ばれるものがある.これは,実験による観測データの情報を元にモデルを適切な低次元部分空間の中の力学系に近似し,計算の高速化を図るものである.
部分空間の決定には Proper Orthogonal Decomposition [1]と呼ばれる手法が広く用いられているが,一方で元の力学系の持つエネルギー保存性のような「構造」を低次元化により壊してしまうため,不安定な数値計算を引き起こしうることも知られている.

これに対し Peng and Mohseni [2]は,ハミルトン系の低次元化を行う手法としてSymplectic Model Reduction (SMR)を提案した.SMR では低次元化後の力学系もハミルトン系になるという構造保存の特徴がある.

本発表では SMR の概要を示すと共に,安定性に関する考察や数値実験の結果等について紹介する.

参考文献:
[1] G. Berkooz, P. Holmes and J. L. Lumley: The Proper orthogonal decomposition in the analysis of turbulent flows. Annual Review of Fluid Mechanics, vol. 25 (1993), pp.539–575.

[2] L. Peng and K. Mohseni: Symplectic model reduction of Hamiltonian systems. SIAM Journal on Scientific Computing, vol. 38 (2016), pp.A1–A27.