離散不等式の解析と一連の高精度保存差分スキームに対する理論解析(研究紹介)

小島 広樹
2014/6/4 (水), 15:00-17:00
東京大学 工学部6号館 235号室

 保存的/散逸的な偏微分方程式に対して,高精度保存差分スキームが提案されたが[1,2],その複雑さから理論解析が未完であった.今回われわれは関数解析で用いられる不等式を差分に基づく有限次元版で,特に微分項を中心差分/コンパクト差分に取り替えた離散不等式を証明し,その応用として非線形シュレディンガー方程式に対するスキームの理論解析を行った.本発表では離散不等式の解析を軸に[1,2]の差分スキームに対する統一的な理論解析の手法を提案する.また,[3]で提案されたCahn–Hilliard方程式に対する線形保存差分スキームについても高精度化をすることを考え,離散関数解析の立場から,高次片側差分を用いた安定な高精度線形差分スキームを提案する.

参考文献
[1] T. Matsuo, M. Sugihara, D. Furihata and M. Mori, Spatially Accurate Dissipative or Conservative Finite Difference Schemes Derived by the Discrete Variational Method, Japan J. Indust. Appl. Math., 19 (2002), pp. 311–330.
[2] 金澤 宏紀, 松尾 宇泰, 谷口 隆晴, コンパクト差分に基づく離散変分導関数法, 日本応用数理学会論文誌, 23 (2013), 2, pp. 203–232.
[3] D. Furihata and T. Matsuo, A stable, conservative and linear finite difference scheme for the Cahn—Hilliard equation, Japan J. Indust. Appl. Math., 20 (2003), pp. 65–85.